倒産・破産した会社の著作権はどう動く?

会社がなくなっても、その会社が保有していた「著作権」が直ちに消滅することはありません。しかし、その取り扱いは手続きの段階によって異なります。


Q1. 倒産した会社が持っていた著作権は誰のものになりますか?

A. 原則として、その会社の「破産財団(管理責任者)」の管理下に置かれます。

会社が破産手続きに入ると、裁判所から選任された「破産管財人」が会社の全資産を管理します。著作権も「財産的価値のある資産」として扱われるため、勝手に販売や利用をすることはできません。

  • 購入したい場合: 破産管財人と交渉し、著作権の譲渡契約を結ぶ必要があります。
  • 注意点: 会社が消滅(清算結了)しても、権利が適切に処理(譲渡)されていない場合、権利が「宙に浮いた状態(孤児著作物)」になるリスクがあります。

Q2. 著作権が「消滅」して自由に使えるようになるケースはありますか?

A. 基本的にはありませんが、法人が完全に解散し、清算が終わった後に「引き継ぐ人がいない」場合は消滅します。

著作権法第62条により、以下の場合は著作権が消滅し、パブリックドメイン(公有)となります。

  1. 相続人がいない場合:(個人の場合)
  2. 法人が解散し、その財産が国庫に帰属すべき場合:(法人の場合)

ただし、倒産手続きの中で債権者への配当のために権利が売却されることが多いため、勝手に「もう会社がないから自由に使っていい」と判断するのは危険です。


Q3. 「例外」として、会社が倒産しても自由に使える規定はありますか?

A. 著作権法が定める「権利制限規定(第30条〜第50条)」の範囲内であれば、倒産に関係なく利用可能です。

倒産したからといって特別な例外が生まれるわけではありませんが、通常の著作物と同様に、以下のようなケースでは許諾なく利用できます。

  • 引用(第32条): 報道、批評、研究などの目的で、公正な慣行に合致する範囲での利用。
  • 非営利・無料での上演等(第38条): 営利を目的とせず、観客から料金を取らない場合など。
  • 私的使用のための複製(第30条): 自分や家族で楽しむ範囲。

逆に言えば、これら以外の「販売目的での利用」には、必ず権利者(または管財人)の許諾が必要です。


Q4. 著作権の譲渡を受けて販売する際の落とし穴は?

A. 「著作権」を買っても、「著作者人格権」は買えないことに注意が必要です。

ここが最も重要なポイントです。

  • 著作権(財産権): 譲渡可能です。倒産会社から買い取ることができます。
  • 著作者人格権: 著作者(この場合は会社や、職務著作の対象となった従業員など)に専属し、譲渡できません。

【例外的なトラブル事例】
もし、破産した会社の元従業員が作成した著作物について、会社側が適切な「職務著作」の要件を満たしていなかった場合、権利が会社ではなく個人(元従業員)に残っている可能性があります。この場合、管財人から権利を買っても、後から個人から権利主張されるリスクがあります。


Q5. 権利者が行方不明で連絡が取れない場合はどうすればいいですか?

A. 文化庁の「裁定制度」を利用する道があります。

会社が消滅し、管財人も解任され、誰が権利を引き継いだのか全くわからない(相当な努力をしても連絡がつかない)場合は、文化庁長官の裁定を受け、補償金を供託することで、合法的に利用・販売することが可能になります。


まとめ

倒産した会社の著作物を販売・利用したい場合は、まず「現在の権利窓口(通常は破産管財人)」を特定することが第一歩です。「会社がない=権利がない」という勘違いは、後に思わぬ損害賠償トラブルを招く可能性があります。特に、清算後の権利の所在については、専門家に相談しながら慎重に進めることをお勧めします。

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Satoshi Maruyama